公方俊良著 「般若心経 人生を強く生きる101のヒント」を読む
さて、今回は、「般若心経」です。
般若心経は、お釈迦様の教えをわずか276文字に
集約したものです。
「空」の思想とも呼ばれています。
最も大切な教えは、「真実に目覚めること」とされています。
「真実」とは、「三法印」すなわち、「諸行無常」「諸法無我」「涅槃寂静」です。
「諸行無常」とは、あらゆるものは移り変わるということ。
「諸法無我」とは、あらゆるものは実体がないということ。
「涅槃寂静」とは、この二つの道理に心の底からうなずき、囚われのない
生き方をするとき、真のやすらぎが得られるということです。
中国禅宗第四祖・道信(580-651)がある時、路上で一人の少年に
出会いました。道信和尚が少年に尋ねました。
「名は何というのか」「名はありますが、人並みの名ではありません」
「ほう。では、どのような名か言ってみよ」「仏という名です」
「さて、自分の名を忘れたな」「名はもともと空ですから」
和尚は驚いて、この少年を弟子にしました。
この少年こそ、後の五祖・弘忍(グニン)なのです。
私たちは、自己も、名も、過去も、何ら実体はないのに、
“ある”と思い込んでいます。
弘忍は、そこを指摘したのです。
仏教では、迷い悩む人の心を此岸(シガン)「こちらの岸」にたとえ、
真実に目覚め安らぎに到達した心を彼岸(ヒガン)「あちらの岸」にたとえます。
そして、考え方を転換してみれば、置かれた環境はそのままで
幸せになれる、というのが到彼岸、すなわち“般若波羅蜜多”であり
“涅槃寂静”なのです。
道理に目覚め悟りを得たからといって、環境が変わるわけではありません。
しかし、心を転換していますので、現状のままで幸せになれるのです。
シェークスピアの言葉に次のものがあります。
「人は心が愉快であれば終日歩いても疲れないが、心に憂いがあると
わずか一キロ歩いても疲れる。人生もこれと同じで、常に明るく
愉快な心を持って歩むことである」
まさに至言です。明るく愉快な心を持つには、あらゆるものごとの
良い面を見、喜ぶことなのです。
幸福とは、心が愉快であるということです。
それ以外に、幸福に、意味づけをしようとすると、訳が分からなくなって
しまいます。
自分の心を愉快にする工夫、この本で探してみませんか?