8まってる

私が、今、ハマっているものを、紹介いたします。

神谷美恵子著 「生きがいについて」を読む

今回は、前回少し紹介した精神科医だった神谷美恵子さんの

「生きがいについて」という本です。

神谷美恵子さんは、「戦後、東大病院精神科を支えた三人の医師の一人」と

言われていました。

キリスト教に関係の深い家庭環境で育ち、津田英学塾在学中に、「らい(ハンセン病)」

の存在を知ります。

神谷さんは、ハンセン病の患者たちとのふれあううちに、「ハンセン病」により

隔離された生活の中にも、「生きがい」を持ち続けている人達がいることを、

発見します。

恵まれた人の中に、「生きがい」を感じられない人がいて、

絶望的な環境の中にいる人が、「生きがい」を感じている場合がある。

で、あれば、「生きがいとは、何ぞや」ということが、この本のテーマの一つです。

神谷さんは、冒頭、数学者岡潔氏の例をあげて、こう定義づけています。

「あるひとに真のよろこびをもたらすものこそ、そのひとの生きがいと

なりうるものであるといえる」

岡潔氏は、「ただひとすじに、このまじりけのないよろこびを求める心が

少年時代から高年に至るまでの一生をつらぬき通した例」として、

紹介されています。

また、神谷さんは、「生きがい」を失った人々について、こう述べています。

「自暴自棄によって自殺、犯罪、嗜癖デカダンスに陥るひとびとを眺めてみると、

そこにいくつかの共通点がある。そのなかで一ばん目立つのは我慢のなさと

時間に対する不信の念である。つまり、みな短気をおこしているのである。

どうせ自分なんかもうだめだ、と自分をみかぎり、事態もよくなることなど

ありえない、と世界と時間の可能性に対しても完全にみきりをつけてしまっている。

そして、耐えがたい苦悩をたち切るため、まぎらすため、『短絡反応』に

出るわけである」

それでは、特別な能力のない私たちに、持ち続けられる「生きがい」はあるのか?

その問いに、神谷さんは、こう答えています。

「死刑囚にも、レブラのひとにも、世のなかからはじき出されたひとにも、

平等にひらかれているよろこび。それは人間の生命そのもの、人格そのものから

湧きでるものではなかったか。一個の人間として生きとし生けるものと心を

かよわせるよろこび。ものの本質をさぐり、考え、学び、理解するよろこび。

自然界の、かぎりなくゆたかな形や色や音をこまかく味わいとるよろこび」

その例として、「信仰」「芸術」「自然」などをあげています。

神谷さんは、ハンセン病に携わる仕事を、脅迫的な内なる力による使命だと

感じていたようです。

このような強烈な使命感を私も持ちたいと思います。